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[89] TWILIGHT OF ZION 「左遷」

投稿者: ? 投稿日:2017年 8月19日(土)11時51分54秒 KD113154088048.ppp-bb.dion.ne.jp  通報   返信・引用

UC0079.10.16 17:47 “スフィア”作戦第三日目  待機宙域 “テト”艦内
「“テト”に残っているのは06が2機・・・いや、お前さんの持ってきたS型もいれて3機か。それに俺の“ビグロ”が1機。」
リフトバーに手をかけたままドワイト・ハルゼー中佐は振り返り、後ろを進むドン・サイゴウ中佐にザップ戦隊の現有戦力の説明を続けた。
「“ヴェネツィア”には09と06が1機ずつ、“クラスノヤルスク”のモビルスーツ隊は昨夜の戦闘で全滅したから、戦隊にはもう機動兵器が6機しか残っていない。まあ、パイロットは脱出できた奴もいるから8人残っているけどな。」
“テト”のモビルスーツデッキは前回の戦闘で損傷した“テト”隊のMS06FZ2機の補修を行うメカニックマンの怒声と搬送機械の駆動音が響いていたが、普段はほぼ継続的に聞こえる艦内放送が一切聞こえてこなかった。前回の戦闘で敵艦の砲撃の直撃を受けた際に艦内区画の4分の1を占めるエリアの艦内放送システムが破損してしまったのだ。
「そんな中でお前さんが戻って来てくれたのは助かるよ、サイゴウ。」
修理が行われている2機のザクに向かい合う形でMS-06Sと、ひときわ大きなモビルアーマー、MA-05“ビグロ”が推進剤の補給を受けている前を二人は宙を飛んでデッキの出口に向かった。
「あれは1機しか無いのか?」
立てた親指を“ビグロ”に向けて傾けながらサイゴウは尋ねた。
「“ビグロ”か?何ならお前が乗るか?」
「フン!!」
高出力熱核ロケットエンジン2基を装備し、重力化でもある程度の作戦行動能力を有する“ビグロ”、現在進行中の低軌道攻撃作戦、“スフィア”作戦の要である。そんな主力兵器のパイロットの座をあっさり譲る事を申し出たハルゼーをサイゴウは鼻であしらった。巨大な“ビグロ”の機体はサイゴウの興味を引いたがハルゼーに譲られてまで手に入れるつもりも無かった。自分の戦闘力であれば何に乗ろうが戦い抜ける確信があるのだ。
廊下の入り口にあるリフトバーのグリップを握り、進み始めて間もなく、ハルゼーは廊下の異様な光景に驚いた。廊下の各所、場所によっては天井部分にオデッサから脱出した大勢の将兵が何人ずつかのグループに分かれ、固まって休んでいた。その姿も陸戦装備の歩兵からノーマルスーツを着た戦闘機乗り、果ては役人にしか見えないスーツ姿の者に至るまで、様々な出自の者達が混在している。
上昇する連邦艦隊を衛星軌道に到達する前に迎撃する“スフィア”作戦に従事していたボー・グエン・ザップ大佐率いる第100戦隊は上昇する味方艦隊を掩護すべく地球軌道に到着した連邦艦隊から攻撃を受け、危うく挟撃されるところを、味方艦隊の来援を得て辛くも脱出に成功した。その直後、グラナダ基地からの急報を受け、今度は地上で陥落したオデッサ基地からの味方の脱出艦隊を救援に急行することとなった。オデッサ上空は統制なく打ち上げられたHLVで溢れかえって混乱を極め、ザップ戦隊も脱出艦艇との衝突を避けながらとりあえず数隻のHLVから将兵を救出し、現場宙域を離脱するのが精いっぱいであった。その結果、ザップ戦隊の旗艦である重巡洋艦“テト”の艦内には数百名の陸兵が居座る形となった。
(この気の毒な連中はいつ引き取られるんだ?これじゃあ“テト”は難民船だぞ。補給艦が来れば連中をグラナダに引き取ってくれるだろうに。)
廊下に配置されているモニターには”テト“の船外の映像が映し出されていたが周辺には小型艦が1隻、”テト“に寄り添うように浮かんでいるだけである。
ハルゼーは現在の戦隊の動きにも解せないものを感じていた。当初の作戦計画では、現在、戦隊がいる待機宙域で補給艦隊と合流し、作戦継続の為の物資、補充戦力を受け取る事になっていたが、宙域に到着してから既に数時間が経過していたが、補給隊は現れず、先ほど連絡艦が1隻現れたのみである。
廊下を進むリフトバーに身を任せて、考えに没頭しかけていたハルゼーは前方に人だかりが出来ている事に気づくと慌ててバーから手を放し、人々と衝突しないように着地して靴底のマグネットを作動させた。
「とにかくどいて下さい。そこのエアロックを通らないと補修が出来ないんです!!」
ノーマルスーツを着た“テト”の補修班の班長がオデッサから脱出してきたらしい地球攻撃軍の中尉に詰め寄っており、二人が率いるグループ数人ずつがそれぞれ彼らを取り巻いていた。
どうやら補修班は前回の戦闘での損傷個所を修理する為に廊下の右側にあって現在閉鎖されているエアロックに入りたがっているのだが、たまたまオデッサからの脱出兵のグループが目的のエアロック前の廊下で休息していたらしい。
「ここは後回しにしてくれないか?曹長。この艦に来てからもう4回も場所を追い出されているんだ。」
地上からそのまま持ってきたらしいアサルトライフルはまだ肩にかけているが剣呑な雰囲気を放ち始めている中尉とその部下達に補修班の面々も身構える。
「いい加減にしてくれ!あんたらがいると“テト”はいつまでたっても戦えるようにならないんだよ!」
身振りもまじえて声を荒げる整備班長にハルゼーが仲裁しようと両手を広げた時、後方からリフトバーによって得られた加速を減殺することなく、サイゴウの巨体が脱出兵のグループのただ中へ突入していった。
「どけい!!」
歴戦の歩兵たちはリーダーの大尉も含め、ボーリングのピンのように四方に弾き飛ばされ、廊下の壁に激突して跳ね返る動きを繰り返した。
「ありがとうございます!」
思わぬ助っ人に礼を言う補修班長に向け、サイゴウはその巨体についている加速を一切緩める事なく直進し、そのまま補修班の兵達も周囲に吹き飛ばした。
「うぬらも邪魔だ!」
かくして地上兵と補修班員が平等に廊下を跳ね回る光景を振り替える事も無く、サイゴウは次のリフトバーをしっかりと掴むとそのまま通路を進んでいった。
「相変わらずだな・・・・。」
サイゴウの行動にハルゼーは呆れて首を振るとサイゴウの後を追い、廊下を曲がって右にある部屋に入るように伝えた。
「ここがお前さんの部屋だ。つい昨日まではガーランドの部屋だったがな。」
士官に割り当てられた個室の一つに二人が到着すると、ハルゼーが室内を案内した。とは言え部屋の以前の主であるハンス・ヨアヒム・ガーランド中佐はもともあまり私物を持っておらず、質素なデスクの上に個人端末が1台置かれているきりの部屋に説明するものなど無かった。
サイゴウは馬鹿にしたような表情で個人端末を見ると、背負っていた南京袋を宙に浮かべたまま、横に置かれている記録媒体を端末に入れ、起動させた。
「相変わらずこんなもので遊んでいるのか・・・。」
画面には以前、サイゴウも見たことのあるガーランドのモビルスーツ用行動プログラムによる戦闘シミュレーターが空間戦闘シミュレーションを開始している。
「ああ、奴は最近やけに行動プログラムを組むのにご執心だったな。なんでも“ドム”にシールドを持たせたかったんだそうだ。」
「惰弱な奴が考えそうな事だ。」
サイゴウが興味無さそうに見守る中、端末ではジオンと連邦のMSを想定しているらしき機体が何も無い仮想空間で戦闘を繰り広げている。
「ま、もう奴には必要はないだろうがな。」
若干は寂し気な様子で話すハルゼーにサイゴウは目を向けた。
「奴はこのままぬくぬくと病院暮らしか?」
「ああ、重傷だったからな、当分戦争しないで済むんじゃあないか?」
「やはり、所詮はクズだったか。」
「まあ怪我人をそんなに責めなさんな。」
相変わらず手厳しいサイゴウに苦笑いを浮かべてハルゼーがなだめた時、ドアが開き、戦隊副官のエドガー・ニシムラ大尉がゆらりと漂って部屋に入り込んできた
「ここにいましたか。」
少し驚いた様子のハルゼーと眉間にしわを浮かべた厳しい形相のサイゴウの二人を前に全く動じることなく薄笑いを浮かべたニシムラはサイゴウに視線を向けると口を開いた。
「サイゴウ中佐は手荷物をまだ解かないで下さい。中佐には30分以内に“ヴェネツィア”に移ってもらいます。06Sも発艦準備をさせています。」
「どういうことだ?」
訝し気な様子のサイゴウの問いにニシムラは答えた。
「戦隊の旗艦は“ヴェネツィア”になるのです。“テト”と“クラスノヤルスク”は戦隊を離れ、グラナダに向かいます。」
「ヴェネツィア1隻で低軌道攻撃かよ?グラナダは何を考えているんだ。」
戦隊のさらなる戦力削減を聞いて恐慌をきたし始めるハルゼーにニシムラは続けた。
「先ほど接触した連絡艦が至急電を持ってきたのですが、“スフィア”作戦は中止です。」
「何だよ?それ。やけに急だな。じゃあ、俺もヴェネツィアに移るのか。急いで荷物をまとめないと・・・」
言いながら自室に向かおうとするハルゼーをニシムラは言葉で制した。
「必要無いです。ハルゼー中佐は“テト”に残り、グラナダに向かうことになりますから。」
「何だって!?そいつは朗報だな、ザップの奴から離れればグラナダで少しは楽が出来そうだ。」
ハルゼーが喜ぶのも束の間、ニシムラは薄笑いを浮かべたまま捕捉の説明をする。
「噂ではハルゼー中佐はグラナダで編成中の特務中隊の指揮官に任命されるみたいですよ。おめでとうございます。」
「そいつは悪い知らせだな・・・。」
特務隊の指揮官といういかにも危険な任務が待っている事を知らされたハルゼーは途端に声が小さくなっていった。
「それで?ザップ戦隊はどこに行くんだ?」
「100戦隊は今からサイド4に移動し、そこで防衛任務に就きます。」
さほど興味を持って質問したわけではなかったハルゼーだが、ニシムラの意外の返答に思わず声を上げた。
「サイド4?あそこは開戦直後に壊滅したんじゃあ?」
「攻撃を免れたバンチが何基か残っており、そこに公国軍も数は少ないのですが戦力を駐留させているのです。」
「で?ザップはどうしている?」
「当然落ち込んでいます。明らかに左遷ですから。」
「だろうね。」
ハルゼーが艦橋の様子を見通せるかのように士官室の天井を見上げた。

UC0079.10.16 17:56 “スフィア”作戦第三日目  待機宙域 “テト”艦橋
“テト”の艦橋内やや後方にある司令席の前でボー・グエン・ザップ大佐は茫然と先ほど受け取った至急電のメモを手にして立ち尽くしていた。周囲ではグラナダに向けた航路変更の準備と“ヴェネツィア”に100戦隊の旗艦機能を移管する為の細かな手続きの為、艦長のヘン・サムリン少佐以下、ブリッジクルー達が忙しく立ち働いていた。
(何故だ・・・・。)
声も無く、ザップはこの十分ほどの間に既に数十回は発した問いを繰り返した。
(何故、作戦中止なのだ・・・。)
確かに想定外の激戦で“スフィア”作戦に参加している各部隊は大きな損害を出している。ムサイ級軽巡と偵察型MSとその護衛のMS若干数によって編成される「索敵隊」は合計3隊が地球からの連邦軍輸送艦の離床を発見する任を負って本作戦に投入されたが、現時点で1隊は敵との交戦で壊滅、残り2隊も損害を出している。また、ムサイ3隻と搭載MSで編成される「護衛隊」は2隊が参加しているが、1隊は旗艦を含めたムサイ2隻が撃沈されて後退し、もう1隊もMSを数機失っている。そして、ザップが直接指揮する「打撃隊」は
作戦の根幹である敵の最大根拠地“ルナツー”の戦力拡充の為のMS多数を搭載する敵輸送艦隊を地球からの上昇途上で撃破する任務を持つ部隊である。
当初はザンジバル級重巡1隻、ムサイ3隻、モビルアーマー3機、モビルスーツ12機という戦力を誇っていたが、現時点でザンジバル級重巡の“テト”は敵艦隊との砲撃戦で小破状態であり、ムサイ1隻は損傷が大きく、既にグラナダへ後退。残るムサイ各艦も大小の被害を受けている。艦載機もモビルアーマーは2機が失われて残りは1機、モビルスーツも8機が撃墜され、残り4機の中にも中破以上の損傷となっているものがあり、先刻、エースパイロットであるサイゴウ中佐が合流したとはいえ、戦力は3分の1以下となっている。
(しかし、“ビグロ”はまだ1機残っている。敵の上昇艦隊は充分に攻撃可能だ。)現在行われていると思われる敵の大規模輸送作戦はいつ終了するかわからない。ルナツーの戦力増強阻止の為には全滅の危険を犯してでも“スフィア”作戦の続行はすべきと考えるザップなのであった。
(それに今、この時にサイド4に配置転換とは・・・。)
一年戦争で壊滅的被害を受けたサイド4はもはや政治的な価値は少なく、また、地球圏の制宙権の過半を占めている公国軍にとって、現在のところ戦略的に重要な宙域に位置しているとは思えなかった。つまり、それまで主要作戦を任されていた戦闘部隊指揮官がサイド4の駐留部隊に配置されるということは子供が見ても「左遷」でしか無かったのである。
加えて今回の異動命令が理不尽な左遷であることをザップに疑わせているのはニシムラの情報であった。この抜け目ない戦隊副官は機動軍の人事局が一週間ほど前に大きな配置転換があり、結果、地球攻撃軍ヨーロッパ方面軍司令マ・クベ大佐と関係の深い人間が人事局の各主要ポストを占めたという情報を(どのような方法をとったのかは不明だが)掴んでおり、現在の機動軍の人員配置はマ・クベの意向が強く反映されている事をザップに伝えたのであった。人事局にはザップの旧知の仲であるオイゲンという少佐がいたが、同じく1週間前に地球攻撃軍に配置転換された事もニシムラから伝えられた。
(これはマ・クベが自身のオデッサ失陥の失態を少しでも緩和する為、“スフィア”作戦は失敗であったとの評価を確定させる策略なのではないか?)
自分の能力の高さを十分に確信しているザップはマ・クベが機動軍の主導権を奪われまいと策動をするのもむべなるかなと考えていた。
しかし、ザップのこの推測は半分は正しく、半分は誤っていた。
突撃機動軍司令キシリア・ザビ少将は(キシリアから見ても)政治的野心が見え隠れするザップに“スフィア”作戦を遂行させる事によって、過度に戦力や権力が集中する事に微かな危惧を抱いており、マ・クベに対してはザップの機動軍内での影響力増大を牽制するように(遠回しではあるが)指示をしていたのも事実である。しかし現在のマ・クベは陥落寸前のオデッサから辛くも宇宙に脱出したばかりであり、ザップの処置に手を打つ余裕など無かった。“スフィア”作戦の中止はグラナダの“スフィア”作戦本部が決定した事であり、これに伴う配置転換は10月10日に着任したばかりの突撃機動軍人事局局長、マイク・ウエーバー中佐が決定している。もっとも、このウエーバー中佐は当然、マ・クベ派の人物であった為、マ・クベからはザップの機動軍内での影響力を縮小させるように言い含められてはいた。このような状況であった為、オデッサから脱出する途上にある巡洋艦“マダガスカル”の艦橋で“スフィア”作戦の中止とザップの配置転換を聞いたマ・クベ大佐は
「そうか・・。」
と一言述べたのみであったと言われている。
グラナダに到着した後はキシリア少将に対し、今回のオデッサ陥落の弁明に注力しなくてはならないマ・クベはザップにそれ以上の関心を払っていられなかったのである。
しかし、そのような内幕に気づかないザップはひたすらマ・クベへのいら立ちを増大させていた。
(マ・クベめ、己の思惑でこんな理不尽を押し付ける事が許されるのか?)
ひとしきり心の中で毒づくと、ザップはようやく司令席に倒れ込むように座った。
「司令、ランチの発艦準備できました。“ヴェネツィア”にご移乗下さい。」
“テト”艦長のサムリン少佐が済まなそうに伝えると、ザップは今座ったばかりのシートからよろめくように立ち上がった。誰の差し金にせよ、今は動くしか無かった。
こうして連邦のルナツー基地へのMS戦力増強を阻止する為の地球低軌道迎撃作戦“スフィア”は3日間で終了した。作戦においてザップ戦隊はマゼラン級戦艦3、サラミス級巡洋艦11、コロンブス級輸送艦10を撃沈している。この作戦の成否の評価については未だに戦史研究者の間でも議論が続いている。



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