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[88] TWILIGHT OF ZION 「陥落」

投稿者: ? 投稿日:2017年 2月27日(月)00時49分47秒 KD113154088048.ppp-bb.dion.ne.jp  通報   返信・引用

UC0079.10.16 1:48 “スフィア”作戦第三日目 第三次攻撃 地球低軌道
全てが青く輝く低軌道の底に向かって公国軍の新鋭モビルアーマー、MA-05“ビグロ”が高速で降下していく。モビルスーツを遥かに上回る最大戦速に耐える機体は細かく振動し、コックピットのモニタに映る外界のものも全ての輪郭が震えているかのような錯覚を起こさせる。ザップ戦隊に残されたMA-05の最後の一機である“ヴァンダーⅠ”は高速機動を行っている状態で機体の先端に装備された大型メガ粒子砲の斉射を開始した。コックピット内に座るドワイト・ハルゼー中佐が操縦桿のトリガーを絞る度に降下する“ヴァンダーⅠ”の下方から逆に上昇してくる地球連邦軍の“サラミス”級軽巡洋艦に向かって吸い込まれる。最初の3条の光弾は“サラミス”の船体に命中し、ガスと溶けた金属の噴煙をまき散らしたものの、艦の上昇を止める事は無かったが、
“ヴァンダーⅠ”と敵艦が交差する寸前で放たれた四発目のビームは“サラミス”後部に連結された上昇用大型ブースターを捉え、一瞬にして巡洋艦の後部半分を瞬時に蒸発させる爆発を起こした。残された艦体前方部分があとを追うように小爆発を繰り返しながら崩壊を始めていく。
「何事もやっていれば慣れていくものだなあ。」
既に後方に過ぎ去った敵艦の爆発に一瞬振り返る動きを見せたハルゼーだが、すぐに目を正面に向け、更に下方から上昇をしてくる敵輸送艦に目を向けた。
現在遂行中の“スフィア”作戦の主要な目的はこの輸送艦の撃沈である。連邦が地球からMSの機体を宇宙における最大の拠点、ルナツー基地に大量輸送を行い、不足する宇宙戦力の補充、拡大を企図している事はハルゼーの上官であるボー・グエン・サップ大佐と突撃機動軍司令部が既に看破しており、それを阻止する為に計画されたのがこの作戦なのである。
ハルゼーが優先目標となる敵輸送艦に改めて機首を向けようとした時、正面に上昇する巨大な戦艦に視界を遮られる。
既にその存在には気づいていたものの、思わず息を飲みながら、操縦桿を傾けて寸前のところでマゼラン級戦艦の船体を回避する。この敵艦が上昇し、衛星軌道に乗ると上方に位置する味方艦隊の大きな脅威となるが、ハルゼーは迷わず当初の目標である敵輸送艦に向けて降下を続けた。
ハルゼーはサブモニタに後方カメラの映像を呼び出し、自機のはるか上空を動いている光点が今、自分が見逃した敵艦の方向へ向かっている事を確認した。ハルゼーの上方には圧倒的に信頼できる戦力が控えているのだ。
「そいつは頼んだよ!サイゴウ!!」

UC0079.10.16 1:51 “スフィア”作戦第三日目 第三次攻撃 地球軌道
「やっと来たか!!」
ドン・サイゴウ中佐が唸るような声を上げる
HLVでキャリフォルニアベースから上昇し、ザップ戦隊と合流してから
簡単な補給を済ましたのみでろくに休息をしていないサイゴウであったが、その強靭な肉体は全く疲れを感じておらず、むしろ戦闘の退屈な経過にいらだっていた。ハルゼーから任された敵艦の上昇コースを素早く読み取ると、サイゴウは自分の搭乗するMS-06Sのスラスターを噴射させてモビルスーツの耐える限界の高度まで滑り降りていく。敵艦が射程に入ると同時に06Sの両腕で構えていたバズーカを発射する。そのままバズーカ弾の行方を確かめる事も無く、腰のラッチから次の弾体を取り出し、バズーカに装填し、初弾がようやく命中して爆発が吹き上がり始めた敵艦に向けて2弾目を放つ。3発目を装填し終わったとき、2発目のバズーカ弾が上昇用ブースターの装甲を破って内部で炸裂し、敵マゼラン級戦闘艦の船体全てを包み込む爆発が起きた。瞬時にこの沈みゆく船に対する興味を失ったサイゴウは遠くで更に一隻の敵戦艦がちょうど自分と同高度を上昇していく姿が見える。
サイゴウは舌打ちをしたが、その敵艦に向かおうとはせず、自分より下方にいる上昇途中のサラミス級巡洋艦に狙いを定め、06Sの加速性能の限界に挑戦するような加速を開始した。
サイゴウが見逃すことにしたマゼラン級戦艦はあと少しの上昇で衛星軌道に到達しようとしていたが、たちまちビームや実体弾の砲撃の雨にさらされることとなった。ハルゼー、サイゴウの攻撃から漏れた敵は更に上空に位置したボー・グエン・ザップ大佐率いる第100戦隊の巡洋艦3隻が陣形の最終ラインから攻撃を行う事となっていたのである。
「新たに敵艦3、射程に入ります!!」
「各艦、陣形を解除!各自の判断で最適攻撃位置につくことを許可する!1隻も軌道に乗せるなよ!!」
ザップの命令が各艦に伝わると指揮下のムサイ級巡洋艦2隻が旗艦の“テト”と組んでいた単縦陣を解き、各自の目標を砲撃できる位置に移動を開始する。
「ジャブローで更に3隻、打ち上げの兆候あり!!」
「ミサイル、各砲、一斉射撃!!」
“テト”艦長ヘン・サムリン少佐の良く通る声が艦橋に響くと上部甲板の実体弾主砲、艦首に4基装備されているメガ粒子副砲、各種ミサイルが一斉に発射される。目標は上昇途上の敵“サラミス”級軽巡洋艦である。
“テト”から放たれた一斉射撃は敵巡洋艦の周囲を彩るが、その船体から直撃を示す爆発が輝くことは無かった。
「ミサイル、命中ありません!!」
「各砲、何をやっているか!一発も当たっていないぞ!!」
オペレーターの声が響く中、ザップに叱責される隙を与えぬかのようにサムリンがインターカムに怒鳴る。
ミサイルも含めた“テト”の何度かの一斉射撃にさすがに数発の命中弾を受けたものの、サラミスはひるむこと上昇を続けていく。もう少しで軌道に到達し、反撃が可能となるだろう。
“テト”の対艦戦闘が続く中、他の僚艦からの戦闘報告も艦橋に飛び込んでくる。
「ヴェネツィア、第一目標撃沈です!!」
「おお!!さすがはクラ・・・カルディナーレ艦長!」
ザップが現在、最も執心しているクラウディア・カルディナーレ大尉指揮下のムサイ級軽巡“ヴェネツィア”が真っ先に敵艦を撃沈した報を受け、ザップは立ち上がって、メインモニタの情報に目を凝らした。“ヴェネツィア”は敵コロンブス”輸送艦を爆沈させていた。ここ数日集中的に行われている連邦の打ち上げ作戦では、この“コロンブス”級にルナツーの戦力増強の為のモビルスーツが多数積載されていると推定されており、現在進行中の公国軍の増援阻止作戦“スフィア”作戦では“コロンブス”級の撃沈が最優先目標となっている。
「見事ではないか!そう思わんか?」
明らかに機嫌を良くしていきながらザップは同意者を求めて周囲を見回すが、艦橋のクルーはそれぞれの任務に忙殺されており(またはその振りをしており、)戦隊副官のニシムラ大尉の薄笑いを浮かべた視線が返ってくるのみであった。
カルディナーレ艦長の優秀さはテトのブリッジクルーも認めるところであったが、ザップの明らかな贔屓ぶりに付き合いたい者はいなかったのである。
「“クラスノヤルスク”も敵輸送艦1、撃沈です!」
「そうか。」
カルディナーレの戦果を聞いた時とは打って変わって、ザップはそっけなく答えながら司令席に戻った。ムサイ級軽巡洋艦“クラスノヤルスク”の艦長、アルマント・ベルガー少佐は29歳の気鋭の艦長であり、ザップとは同じパトロール艦隊、グラナダ第2哨戒群に所属していた為、旧知の仲であったが、“スフィア”作戦に参加した際、ザップと再会した際にカルディナーレ大尉の着任とタイミングが重なってしまい、以後、ザップのカルディナーレへの思慕の念のあおりを喰らう形で常にないがしろにされる状況が続いている。ベルガー本人はその前向きな性格によって特に気にしてはいない様子だったが、事情を知る戦隊の者たちの間ではベルガーに対する同情の雰囲気が醸成されていた。
ベルガーに同情する者の筆頭であるサムリン少佐がクラスノヤルスクの戦果も評価に値するものえあることを訴えるべく、ザップに向けて口を開きかけた時、通信コンソールにいるニーナ・オッペル少尉が鋭い声を上げた。
「クラスノヤルスクのMS隊より入電、“戦隊上空、高軌道ニ敵艦隊見ユ”です!!」
「数は!?」
「ポイントA01に敵艦2、G02に敵艦3、高度を下げながら機動兵器を展開中、数は不明!!周辺宙域のミノフスキー粒子、濃度上昇」
「先ほど上昇してきたサラミスも砲撃を開始しました。
立ち上がったザップにオッペル少尉と索敵オペレーターがそれぞれ叫び返す。
「上から来ている敵艦隊はルナツーからの援軍でしょう。我々を包囲する陣形ですね。まだ未完成ですが。」
ニシムラ大尉が即座に状況を分析すると相変わらず薄笑いを浮かべながらザップに伝える。
「上空のモビルスーツ隊、仕掛けさせますか?」
サムリンの問いかけにザップは一瞬押し黙り、やがて口を開いた。
「いや、駄目だ。モビルスーツ隊はただちに呼び戻し、戦隊の直掩に戻せ!これは遭遇戦じゃない。明らかに我々の阻止を狙っている!!」
ザップの言葉が終わる前にオッペル少尉が戦隊のはるか上空で索敵警戒の為に展開している各艦のMS隊に後退を呼びかけ始める。
「モビルスーツ隊より続報です!“ポイントI01に敵艦見ユ”」
オッペル少尉の報告にはもはや驚かず、ザップは指揮を続ける。
「全艦!現在の攻撃目標を破棄、進路3、マイナス1で高度を下げつつ、現宙域より全速で離脱する。」
「了解!進路3、マイナス1、最大戦速!」
“テト”の各所に設けられた姿勢制御スラスターが何度か噴射され、船体が目指す方位まで回転、固定されるとメインエンジンがひときわ大きく輝き、機動巡洋艦の名にふさわしい推進力で宙域の離脱を開始した。続けて戦隊の2隻の軽巡洋艦も旗艦の動きにならう。
「まだ敵の輸送艦隊はジャブローから打ち上げられています。少し惜しい気もしますね。」
ザップの指揮に納得しつつもサムリンが未練を口にすると、ザップは戦術ディスプレイで戦隊の陣形を確認しつつ答える。
「敵の輸送艦隊にも戦闘艦が含まれている。上昇が完了すれば大きな脅威だ。このまま留まれば上空から降りてくる敵増援との間で挟撃されるぞ。包囲が完成する前に高度をすり抜けるしかない。」
了解しましたと答えたサムリンは、この話題に関する事で何か腑に落ちない部分があり、数秒間考えていたが、突然その理由に気づき大きな声をあげた。
「輸送艦隊と言えば、下でそれらと戦っている“ヴァンダーⅠ”とサイゴウ中佐に後退命令は!?まだ出していませんが?」
「・・・・当然後退させる。二人には戦隊に追随するように伝えろ。ミノフスキーが濃ければ、信号弾と信号灯の使用を許可する。」
ザップは平然と応じたが、僅かに目が泳ぎ、こめかみの当たりが少し痙攣しているのをサムリンは見逃さなかった。
(二人の事は忘れていたのか・・・)

UC0079.10.16 2:05 “スフィア”作戦第三日目 第三次攻撃 地球低軌道
「何かおかしいぞ?」
自らが撃沈した連邦の“コロンブス”級輸送艦の崩壊した船体がいくつかの破片に分かれて上方から降り注いでくるのを乗機のMA-05に回避させながら、ハルゼーは戦場の気配が変わった事に気づいた。
(上がって来る連中を攻撃しているのは俺だけになっていないか?)
ジャブローから上昇してくる敵のモビルスーツ輸送艦隊にはハルゼーのMA-05、モビルアーマー“ビグロ”がヒット・アンド・アウェイ攻撃を仕掛ける一方で、つい先ほどまでは上空から戦隊の各艦からの砲撃が降り注いでいたが、今はそれがぴたりと止んでいた。
かすかに焦りながらMA-05のモノ・アイに上空をスキャンさせると、案の定、味方の艦隊の姿を見えない。
「おいおい、いくらザップでも置いてきぼりはあんまりじゃあないか?」
艦隊のいるはずの位置よりやや低い高度に1機のザクが戦闘機動を行いながら上昇する敵艦に攻撃を加えている姿が捕捉された。
「サイゴウはまだいるのか・・。」
サイゴウの姿で一瞬は安堵したハルゼーだが、すぐに焦りが戻ってくる。常に戦う事自体が優先目標目的であるサイゴウがこの宙域に留まる判断を下していても特に安心材料とはならないのだ。
(他に何か無いか?)
サイゴウ機の遊弋するさらに上空を油断無く探すハルゼーの目に打ち上げられてから時間が経過し、消えかかった信号弾の輝きが飛び込んできた。
「あれは撤退信号!!」
ハルゼーの判断を後押しするかのように上空や後方から接近するモビルスーツ隊の反応を告げるメインモニタの警報がハルゼーの視覚と聴覚に訴え始めた。
連邦の救援艦隊が上空、つまり高軌道から、降下してくるのに加え、地球から離床し、無事軌道に乗った輸送艦隊の護衛艦隊が後方からジオンの襲撃艦隊に反撃すべく接近しつつあったのである。
「敵の増援かよ!これはマズ過ぎる!」
留まれば確実な死が待つことを確認したハルゼーはMA-05のロケットブースターの出力を全開にして、まずは同じく孤立しているサイゴウ機と合流すべく上昇を開始した。
高い機動力を誇るモビルアーマーのみが活動できる低軌道を離脱し、モビルスーツが活動できる限界付近の高度で戦っているサイゴウのMS-06Sに接近するMA-05のコックピットでハルゼーはサイゴウのプライドに抵触すること無く、後退をさせる為の説得方法を必死で考えていた。
サイゴウのMS-06Sは低軌道を自由に滑りながら続々と上昇してくる敵の輸送艦隊にバズーカ弾を撃ち込み続けている。
「おーい、サイゴウ。ここもそろそろ飽きただろう?場所を変えようぜ?」
MA-05の相対速度をサイゴウのザクのそれに合わせつつ、出来るだけ平静を装い通信回線を開く。
「まだ敵が上がってくる。後にしろ。」
にべもないサイゴウの答えはハルゼーも予測していた為、更に言葉を重ねる。
「俺の“ビグロ”で馬になってやるよ。こいつは速いぜ。」
しばらくの沈黙ののち、サイゴウの低い声がハルゼーのヘッドセットに響く。
「よかろう。」
ザップ戦隊に合流し、“テト”のハンガーでMA-05を見たサイゴウは俺の“ビグロ”は無いのか?とザップに詰問していたのをハルゼーは見ていた。“ビグロ”の機動力はサイゴウから見ても魅力的だったのである。
「そう来なくては!!」
サイゴウの“ザク”がハルゼーの“ビグロ”のクロウアームの付け根、つまり方の部分に掴まったのを確認するとブースターの出力を最大近くまで引き上げ、刻々と危険度の増しているこの戦域からの離脱を開始する。
後方やや上空からは敵の増援艦隊から出撃したモビルスーツが10機以上、接近してくる。“ビグロ”の加速によって、その距離は再び開き始めた。
(やれやれ、30過ぎて、いつまでもこんな事やってたら、そのうち死んじまうぞ。)
目先の危機は脱したハルゼーがうんざりした思いで傍らを見ると、ハルゼー機に掴まっているサイゴウの“ザク”が残り1発のバズーカ弾を敵の編隊に向けて撃つ姿が見えた。
「チッ!外れたか・・・」
この期に及んでまだ攻撃を続けるサイゴウをハルゼーは奇妙な感心とともに見直した。
(こういう男は30過ぎても生き残るんだろうな・・・。)


UC0079.10.16 2:10 “スフィア”作戦第三日目 第三次攻撃 地球低軌道
「“ヴァンダーⅠ”、サイゴウ機と合流。我が艦隊に向けて移動を開始しています。」
索敵オペレーターの声にザップも密かに胸をなでおろす。傍らでザップを代弁するようにサムリンが安堵の声を上げた。
「お二人とも、信号弾に気づいてくれたのですね。」
「ああ、MA-05なら敵を振り切って我々に追いつけるだろう。このまま敵の包囲の隙間を潜り抜ければ、態勢を立て直して作戦を継続できるぞ。」
ザップがしかめつらしく現状を解説した時、索敵オペレーターの鋭い声が飛ぶ。
「センサーに感、敵艦3!!周辺に敵機動兵器の展開を確認!10機です!」
「何!!もう追いついて来たというのか!!」
驚愕し、顔を向けたザップに対し、オペレーターが叩きつけるよう報告を続ける
「敵艦隊の座標、Z11!正面上方、低軌道に向けて降下中!!」
「後方の敵艦隊はまだ追いつけませんよ。これは別動隊ですね。」
眠たげに薄笑いを浮かべながらニシムラが口を挟む。
「高度を落として潜り抜けられないか?」
すがるように問いかけるザップに答えたのは航法士官のマレシュだった。
「無理です・・・。これ以上高度を下げたら地球に再突入です。」
「再突入はできますよ。“テト”だけなら。」
苦悩するザップの反応を面白がるようにニシムラが指摘するとザップは頭を激しくふりながらその案を否定する。
確かにニシムラのいう通り、公国軍の最新鋭巡洋艦である“テト”は地球の大気圏に再突入する能力を有しているが、随伴する“ムサイ”級軽巡洋艦2隻にはそのような能力は無く、地球の重力圏に引かれてしまうとあとは燃え尽きる運命となる。
「駄目だ!!クラウディアを残して行けるはずが無い!!」
「臆面もなく言いましたね・・・。」
自分とともに窮地に陥っている部下たちの中でも自らが思いを寄せている美貌のムサイ級艦長のみを心配するザップの公私混同に呆れるサムリンと、そのザップの心を更に深く探ろうとするニシムラを黙殺して、ザップは戦隊に命令を発した。
「全艦最大戦速!正面の敵戦隊を撃破し、当宙域を離脱する!ミノフスキー粒子の散布を継続!!砲撃戦用意!!モビルスーツ隊!敵機を艦隊に近づけるなよ!!」
ザップの命令の元、戦隊のモビルスーツ部隊は戦隊の上空掩護の隊形を解くと正面上空より迫りくる敵に向かって加速をし、接敵空域を少しでも戦隊から離れた場所にすべく突進していった。また、戦隊の各艦は最大限の加速を行い、敵モビルスーツ達の更に後方から接近している敵戦隊の各艦に主砲の照準を合わせ始める。
通常の艦隊戦であれば各艦とも加減速と回避運動を行いながら最適な攻撃条件を整えていくが、後方から10隻近い敵艦隊が接近している以上、策のない形で前方の3隻の敵艦に突進し、ノーガードで殴り合う形で撃破していくしかない状況である。
「有効射程距離まであと8、7,6・・・・」
オペレーターのカウントダウンを目を閉じて聞いていたザップはそれが終わる5秒前に刮目し、命令を発した
「撃て!!」
戦隊の3隻の巡洋艦の主砲や副砲から放たれるメガ粒子砲の光条と大口径実体弾砲の輝きが周辺を染める。
「衝撃に備えろ!!」
当然敵艦隊からの一斉砲撃もザップ戦隊に襲い掛かり、各艦の間にはミサイルや光弾が降り注いだ。まだ有効射程に入ったばかりだが、敵の砲撃が1、2発、ザップ戦隊の各艦に直撃し、輝く血しぶきのような爆発を艦体に散らす。
大きな振動と小さな複数の振動が混合されたような衝撃が“テト”の艦橋を遅い、既に戦闘報告と命令が飛び交う艦橋内に”テト“の損害状況を確認する新たな喧噪が加わった。
「損害は未確認ですが、あの区画だったら損害は軽微でしょう!」
“テト”を熟知しているサムリンがザップに請け負う。
「こっちも少しは当てろ!」
その後も艦隊間で砲撃戦が続き、敵味方の艦隊が互いに接近するにつれ、双方の命中弾が増えていく。その中間点の空間で展開されているモビルスーツ戦も次第にザップ戦隊の劣勢が明確になってきた。
「ピンケルのザク、通信途絶!!クラスノヤルスク隊が全滅です!」
新たな爆光が広がっていく様を艦橋の窓から直接睨みながらザップに背筋汗が流れるのを感じた。
「もうすぐモビルスーツ隊が突破されるではないか・・・・。」
10機の連邦のモビルスーツ隊を迎撃したザップ戦隊のモビルスーツ7機のうち既に3機が撃墜されている。これに対し、連邦はモビルポッド“ボール”タイプが1機と“ジム”が1機のみが撃墜され、8機が健在である。また、隊のエースであるサイゴウとハルゼーは残った推進剤を使って隊との合流を目指している最中であり、こちらに到達したとしても戦闘する余力は残っておらず、ほどなくザップ戦隊の残り4機のモビルスーツも殲滅されてしまうだろう。そうなれば艦船のみとなるザップ戦隊に敵の機動兵器を退ける力は無かった
“テト”の艦橋内に焦りが広がっていく。
「これは詰みましたかね。」
いつもと変わらない調子で感想を述べるニシムラにザップが鬼の形相で振り返り、反論を述べようとした時、オペレーターの声が割って入った。
「新たな反応を検知!艦隊直上より急速に近づく!!数、9!機動兵器です!」
「新手だと!」
戦隊の進路を阻むように正面上方から接近しつつある敵の別働艦隊との交戦で既に劣勢に立ちつつあるザップ戦隊にとって、直上から出現した新手に頭上を抑えられては、いずれ後方からも追跡してくる敵本隊を待たずして壊滅は必至であった。
「これは間違いなく・・・」
ニシムラが言わずもがなの結論を更に言いつのろうとした時、オペレーターが続報を伝えた。
「識別信号確認!!接近の新手はリック・ドム!味方です!!」
「ドムの後方にムサイ3隻を確認!!所属は“キャメル”パトロール艦隊です。」
「援軍だ!!ドムが9機だ!!」
ザップが思わず艦橋の窓にとりつくと3機ずつ編隊を組んでモビルスーツの交戦する宙域に向かうMS-09R“リック・ドム”のスラスター光が9つ、上方の遠くに見て取れた。
「キャメル隊より発光信号!!“我支援ス。貴隊は現状航路ヲ維持。全速デ離脱セヨ。”です。」
通信士官のオッペル少尉が安堵とともに伝えると、ザップも答える。
「よし!こちらも発光信号!!返信は“来援感謝スル”だ!!」
砲撃を加えながらザップ戦隊の進路を阻もうとしていた連邦の別働艦隊はキャメル隊の9機のドムが接近すると、やがて進路を変更し、キャメル隊に対応する艦隊運動を開始した。その正面では別働艦隊所属のジムとキャメル隊のリック・ドムが激しい交戦を開始した。
「全艦最大戦速!!この宙域を早く離脱すれば“キャメル”隊の連中もここから退くことができる。」
ザップ戦隊は上空で交戦する連邦艦隊とキャメル隊を潜り抜けるように低軌道を最大戦速で進み、虎口を脱した。
30分ほどがたち、ザップがようやく一息つこうとした時、各コンソールからの警報音とオペレーターの報告によって、“テト”の艦橋は騒然となった。
「グラナダ司令部より非暗号化入電!!」
通信士官のオッペル少尉が鋭く声を上げると競うように索敵オペレーターが報告する。
「地上から低軌道に上昇する高熱源体多数!!」
ザップはオッペルの方に向きなおり、報告を促した。
「非暗号化通信だと。グラナダは何と言っている!?」
「低軌道で行動中の公国軍全艦艇は現在の作戦を中止し、脱出艦隊を救援せよです。」
オッペルの声に合わせるかのように“テト”の作戦コンソールに軌道上に現れた多数の艦船の反応が表示された。
「脱出艦隊?どこからだ?」
事態が呑み込めないでいるザップに薄笑いを浮かべながらニシムラが指摘する。
「決まっているじゃあないですか。オデッサからの脱出艦隊ですよ。オデッサが落ちたんです。」
ザップが艦橋の窓に駆け寄ると“テト”の進路、下方に広がる地球の青い光の中に無数のHLVやHOTOL、シャトルの発するスラスターの輝きが見えた。それはニシムラが指摘した通り、地球攻撃軍のヨーロッパ方面軍が破れ公国軍最大の資源供給拠点オデッサ基地が陥落した証であった。



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