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[87] TWILIGHT OF ZION 「帰還」

投稿者: ? 投稿日:2016年 2月 6日(土)01時11分55秒 KD113154088048.ppp-bb.dion.ne.jp  通報   返信・引用

UC0079.10.16 0:44 “スフィア”作戦第三日目 地球軌道
「有効射程距離まであと2分!!」
「敵機、ジムタイプ5、ボールタイプ4!!」
「ヒエン、デスタン、出来るだけ編隊を崩すな!敵のモビルスーツを艦隊に近づけないでくれよ!・・それにしても敵さん、数が多いなあ・。」
“テト”のオペレーターのオッペル少尉の緊迫した声と全モビルスーツ隊の指揮を取るドワイト・ハルゼー中佐のボヤきを含んだ声がほぼ同時にノーマルスーツのヘルメットに響くと“ヴェネツィア”のMS隊長ジスカール・デスタン中尉は部下達に指示を飛ばす。
「アネット、ピエール、聞いた通りだ!!乱戦になる前に出来だけ墜としたい編隊を保持して右から回り込むぞ!」
「402了解!!」
「任せて下さい、中尉!」
部下のピエール・ジラルデリ少尉とアネット・シャルパンティエ少尉からの頼もしい返信が耳を打つ間もデスタンはメインモニタにも見え始めている敵のMSのスラスター光を油断無く見つめた。
ボー・グエン・ザップ大佐率いる第100戦隊を用いて地球より上昇してくる敵の輸送艦隊を低軌道で襲撃、撃破するスフィア作戦はまだ継続していたが、現在は北米の公国軍拠点であるキャリフォルニアベースより打ち上げられてくる(作戦継続に必要な“重要要素”を積んだ)HLVの回収が戦隊の優先任務となっている。当然回収にあたっては戦闘を避けたいところであったが、グラナダから指示されるランデブーポイントが再三変更された結果、すっかりペースを乱された第100戦隊はやむを得ず“クラスノヤルスク”のモビルスーツ隊3機を単独先行させてHLVに向かわせ、本隊は同じ軌道を後から進む事になった。そのような状況で連邦のMS部隊が高軌道より逆落としに接近、第100戦隊の本隊をほぼ奇襲に近い形で攻撃を仕掛けてきたのである。
「ハルゼー!!敵の本隊は?そちらで敵艦隊は見つからんのか?数は多いがあのMS隊だけで仕掛けてきているとは思えん!」
ノイズで乱れがちだが、第100戦隊司令ボー・グエン・ザップ大佐の怒鳴り声が各パイロットの耳を打つ。
「見えませんよ!!こっちはこれから敵さんとやり合うんだ!そっちで探して下さいっての!」
今の戦隊でザップに率直な意見をぶつける事が出来るのは階級、年齢が近く、今次大戦の開戦間もなくからザップと共に戦い続けてきたハルゼー中佐だけである。
(中佐の存在は貴重だ・・・。)
接敵直前の緊迫した状況の中、デスタンは噛みしめるように実感した。ボー・グエン・ザップ大佐は非凡な指揮官である事はこのスフィア作戦で共に戦って少しだけ理解出来た。だが、その大胆な指揮ぶりにはともすれば部下の負荷が目に入らなくなる危うさが伴う。デスタンが見たところ、そんなザップの危うさを抑える役割を担っているのがハルゼー中佐だった。今回も戦いながら敵の艦隊を捜索するように要求するザップを諌めている。
「覚えてろよハルゼー。索敵はこっちでやってやる!その代り艦隊には1機も近づけるなよ!」
ザップ司令は渋々ながらハルゼーの諫言を聞き入れたようだがハルゼー中佐がこれに答えることは無かった。両軍のモビルスーツ隊が限界射程ではあるが交戦距離に入り、まだ遠距離ながらお互いの間の空間で実体弾とエネルギー兵器の光弾が飛び交い始めていたのである。
「編隊を維持!回り込むぞ!」
デスタンは”ヴェネツィア“隊の部下2名に命じながら。自らの搭乗するMS-09R“リック・ドム”の携行兵器“ジャイアント・バズを肩に乗せて両手で構え、初弾を放った。
(この距離のうちに少しでも敵を減らしたい!)
公国軍の新鋭モビルスーツであるMS-09Rと敵のモビルスーツ“ジム”タイプはその戦闘力はほぼ互角と言われているが、長距離での射撃戦においては09Rが若干有利に戦いを進める事が出来る。何故なら“ジム”の携行兵器は中、近距離戦での命中精度を重視した拡散型ビーム兵器であるのに対し、09Rは当てさえすれば威力は減殺しない実体弾兵器だからである。
この有利な交戦距離で戦える時間はわずかしかない。有効に使わなければ戦況は厳しいものになるのである。
今、デスタンの放った”ジャイアント・バズ“の弾体はMS隊の中心当たりに位置する1機に命中したようだが、弾体の爆発が収まると右足を大きく損傷しながらもジムが相変わらずこちらに向かって突進してくるのが見える。デスタンがもう2発のバズーカ弾を放つと2発ともが命中し、ジムはようやく砕け散った。
デスタンが撃墜した“ジム”の更に後方から別の”ジム“がスラスターを輝かせながら急接近しようとしていたが、突如、胴部を太いビームに貫かれて四散した。ハルゼー中佐の乗機、MA-05”ビグロ“から大口径メガ粒子砲が放たれたのである。
「さすがだな。」
艦隊防衛の為に“ビグロ”の最大の武器である加速性能を発揮せず、あくまで他の僚機の速度に合わせて戦いながら確実に敵の数を減らしているハルゼー中佐に感嘆の念を覚えながらデスタンは自機の兵装を確認する。
「残弾2・・・。」
つぶやきながら09Rの機首を巡らせたとき、メインモニタに左腕を破壊されたMS-06F“ザク”がバランスを崩して吹き飛ばされてくる姿が横ぎった。
「アネット!!」
デスタンの声にアネットが返信する間も無く、追い打ちのビームが2発、3発と06Fの機体を貫通し、06Fは残った手足をまき散らしながら爆発した。
「ピエール!!散開だ!」
既に乱戦にならざるを得ない距離に入った事を悟ったデスタンは編隊を解き、各機の判断で戦う事を決断した。ピエールのザクとその正面に現れた連邦のモビルポッド“ボール”がそれぞれ実体弾を撃ち合い始める。デスタンのドムにも死角を狙ったのか斜め下方から新たな“ジム”が上昇してくる。
白兵戦用のビーム兵器を閃かせながら加速してくる敵機に対し、デスタンはドムの両脚に供えられた強力なスラスターの出力を全開にして急制動をかけ、敵から距離をあけ、バズーカを放つ。戦死した部下を思う余裕は全く無かった。
「ザクは敵の量産型に押されているではないか。」
第100戦隊旗艦“テト”のブリッジでボー・グエン・ザップ大佐が憮然として戦術モニタを睨んだ。
「連邦の“ジム”タイプは攻撃力、防御力共に“ザク”を上回っていますから。」
傍らで戦隊副官のエドガー・ニシムラ大尉が薄笑いを浮かべてザップの言葉に答える。ニシムラの言葉の通り、連邦の量産モビルスーツ“ジム”は公国軍のMS-06が装備するM―120A1通称“ザクマシンガン”の120mm弾の連射を一度浴びた程度では破壊できない装甲を持つ。その上、たいていの機体は標準武装としてシールドを装備しており、この防盾で防がれると120mm弾の連射はほとんど弾かれてしまう。一方、“ジム”の多くが装備するビーム兵器はMS-06の超硬スチール合金の装甲をやすやすと貫通する事が出来、一撃で撃破される例も少なくない。“ザク”が“ジム”に射撃戦闘で勝利するには“ジム”の射撃を確実に回避しながら、“ジム”の装甲が薄い個所に射弾を撃ち込むしかないのである。
「熱源体、急速接近!“ジム”1機が突出してきます。」
オペレーターの緊迫した声に艦橋もざわめく。両軍モビルスーツ隊の乱戦をうまくすりぬけたジムが艦隊に向け突進してきているのである。
「全艦、対空防御だ!ハルゼーめ!!何をやっている!!」
「対空戦闘用意!右舷からくるぞ!!」
ザップの罵り声と“テト”の艦長、ヘン・サムリン少佐の命令が飛び交う。
“テト”の上部甲板に配備されているCIWが右舷方向に向けて砲身を巡らせ、
艦外を見ると右舷側を進むムサイ級軽巡洋艦“ヴェネツィア”も3基のメガ粒子主砲の砲身を右舷側に向け始めている様子が見える。もちろん左舷側のムサイ、“クラスノヤルスク”も同様に対空戦闘を準備しているだろう、
敵機の接近を待って全艦が固唾をのんだとき時、オペレーターが新たな情報を叫ぶ。
「敵機をザクが一機追尾中!ヒエンのザクです。」
“テト”のMS小隊長であるファン・ヒエン中尉は愛機MS-06FZ“ザク”のスラスターを全開にして、艦隊への接近を試みている連邦の“ジム”にまとわりつくように追いすがる。
「対空砲火待て!!ザクに当たる!」
サムリンが命じる声を聞きながらザップはヒエンの06FZと敵機が激しく撃ち合う光景を見つめる。
ヒエン機は敵のジムに対して回り込む機動を続け、その間、携行兵器“ザクマシンガンの3点射を撃ち込む。対するジムは目まぐるしく動き回る06FZに機首を向けながらシールドを構え、その脇から右腕を突き出して、ジムの標準装備である”ビームスプレーガン“を断続的に撃ち返す。
06FZの射撃はその過半がジムのシールドに防がれ、残りは機体の腕や胴体に着弾して火花を散らすが大きな損害を与えていない。一方でジムの放つビームの光弾は一発でも命中すればザクを撃破する威力を持っているがヒエンの卓越した操縦技量により、回避され続けている。
一方はその装甲で楽々攻撃を防ぎ、もう一方は操縦技術によって必殺の一撃を躱し続ける。このフェアではない交戦がしばらく続くかと思われたとき、ヒエンの06FZが急加速を行って“ジム”の右側面に回り込んだ。シールドによる防御にこだわりすぎたジムが機体の向きを合わせる動きを一瞬遅らせてしまったのである。ジムが向き直るまで1秒にも満たない優位な時間を利用してヒエンの06FZはこれまでの牽制射撃から一転し銃身も焼ききれんばかりの連続射撃を敵機に叩き込んだ。数発の120㎜弾がジムの右わき腹付近に撃ち込まれ、そのうちの一発は“ランドセル”とよばれる背面スラスターユニットを貫通した。射撃を終了したヒエンは旋回運動をやめ、ジムから離れる機動を行うと06FZを機敏に振り向かせて敵機に再び照準を当てたが、ランドセルの推進剤が誘爆したジムはそれまでの堅牢さが嘘のように既に光の球と化していた。
戦闘の様子を見守っていた“テト”のブリッジクルーはメインモニタにジムの爆光が広がると歓声と安堵の声を交差させた。
(こうまでしないと墜とせないのか・・・。)
友軍のエースをもってしてやっと倒すことのできる敵のモビルスーツの優秀さに改めて脅威を感じるザップであった。
「敵艦隊捕捉!!」
いつものように艦橋の窓付近まで進んでいたザップはオペレーターのオッペル少尉の鋭い声に振り返る
「やっと見つけたか!どこだ?」
「ポイントA18・・・・HLVの向こう側です!!」
「A18だと・・・敵の方がHLVに近いのか・・・。」
うめくように声を上げるザップに追い打ちをかけるようにオッペル少尉が情報を追加する。
「敵艦隊はサラミズタイプ2!!“クラスノヤルスク”隊の回収ポイント到達より5分早くHLVを有効射程距離に入れます!」
「5分あればHLVを沈めたうえでゆとりを持って離脱できますね。」
まるで敵方の参謀であるかのように落ち着いて分析する戦隊副官のエドガー・ニシムラ大尉を横目でにらみながらザップは命令を発した。
「してやられたという事ではないか・・・・。全艦最大戦速!!敵MSに取りつかれても構わん!!回収ポイントに急げ!!」
焦燥感が“テト”のブリッジに広がる中、ザップは戦術ディスプレイで両軍の位置データを確認する。指揮下の3隻の巡洋艦は正確に艦列を組み、命令通りに加速していくが、どう見てもHLVを救えるとは思えなかった。

UC0079.10.16 0:52 地球軌道
地球連邦軍第91戦隊指揮官兼艦長のアレックス・ロング少佐はサラミス級巡洋艦“リアンダー”のブリッジで彼の仕掛けた作戦の推移を緊張の面持ちで見つめていた。
(ここまで計画通りだが、一つでもタイミングが外れれば作戦は崩壊する。)
2隻のサラミス級からなるロング少佐の艦隊は約30分前に軌道上を進む敵艦隊を発見すると同時に地上軍から北アメリカで敵HLV上昇の報告を得た。敵艦隊とHLVの進路を分析した結果、2つの敵目標は間違いなく回収の為、合流を目指していると判断された。
9機のモビルスーツ(ジオンと異なり、当時の連邦軍はRB-79“ボール”もモビルスーツと呼称していた。)を搭載しているとはいえ、たった2隻の艦隊が重巡を含む敵艦隊の企図を妨害するには正面攻撃では難しいと考えたロングはいちかばちかの作戦を練った。敵艦隊の進路を計算し、配下のMS部隊を長駆出撃させて敵の進路に進出させ、奇襲を仕掛ける。敵艦隊はこの攻撃によりHLVに向かう航路から外れるか速度を落とし、MSによる迎撃を行うはずである。
一方、2隻のサラミスは最短コースでHLVに接近し砲撃でこれを撃沈。あらかじめ決めた合流点で敵艦隊攻撃から後退する味方MS部隊を回収するという作戦である。30歳になったばかりの血気盛んなロングらしい冒険的な作戦である。今のところはこちらの狙い通りに戦闘は推移しているが、実行するからには成功させなければならず、緊張は隠せないロングであった。
「敵HLVを射程に捕捉するまで、あと4分!!」
「捕捉と同時に砲撃開始する。一撃で仕留めるぞ!各砲用意しておけ!」
ロングの言葉を待つまでもなく、“リアンダー”と僚艦の“ブレニム”の各砲は有効射撃距離に入ると同時に敵HLVに全力砲撃を始めるべく、既に敵船に照準を合わせている。
(撃沈に時間が掛かるとMS隊の回収が難しくなる。余計な手間をとらせるなよ・・・。)
ロングが作戦の次の段階の成否に思いを巡らせている時、オペレーターから困惑した声が飛び込む。
「敵HLVに動きあり!!ハッチを開放しています!」
艦橋のモニタに映し出されたズーム映像には確かに地球を背景に漂うHLVのメインハッチが開いていく様子が映っている。ロングは“余計な手間”になりそうな事態の発生に祈るような気持でモニタに目をやった。
HLVのハッチが完全に開き切る前に船内から貨物用コンテナが飛び出してきた。巻き添えで船外に漂い出てしまったらしいノーマルスーツ姿の乗組員が慌てて命綱を手繰って再び船内に戻ろうとしている中、船内から1機のモビルスーツの姿が歩み出てきた。先ほどのコンテナはこのMSによって蹴りだされたのであろう。
「敵HLVよりモビルスーツ!!ザクです!!」
「動ずるな!!射程に入るのはこちらが先だ!主砲、ランチャーは予定通り砲撃準備!CIWはMSの接近に備えろ!」
ロングの言葉をよそにHLVのハッチから歩み出たモビルスーツはゆっくりと顔をロングの艦隊の方向に向けると体を傾けると突然全力でスラスターを噴かすと凄まじい勢いで発艦した。逃走してくれればとロングは思ったが、モビルスーツは明らかにこちらの艦隊を目指している。
「敵MS発進した!・・・・・物凄い速度です。・・・・普通の“ザク”タイプの3倍はあります。」
「チューンアップタイプか・・・。」
今、接近しつつあるザクは外見こそ通常のザクと変わらないが、指揮官用に強化された機体であり、機動力、推進力共に通常のザクを凌駕する性能を持つ。ジオンの赤い彗星もこのタイプのザクを使用していると言われる。
(恐らくはパイロットもある程度、腕が立つだろう・・・。)
戦況が悪化していく予感を感じながらロングがまだ姿の見えない敵MSが突進してくるであろう空域を見つめていると、艦橋側面にいる通信士が動揺した声を上げた。
「艦長!共通回線で何か聞こえます・・・・笑い声です。」
「回してみろ!!」
ロングの鋭い声に反応した通信士はご丁寧に音声をブリッジ共通に切り替えた為、艦橋内を大音響で男の豪快な笑い声が響いた。
「敵MSからです。なおも急速に接近!!」
「何だと・・・・。」
狂ったような哄笑と言えるその笑い声は経験豊富な艦橋のクルー達でさえも少なからず動揺させた。
「音声は消せ!発信位置データだけは追尾、各砲に転送しておけ、照準の助けになる!」
ロングが鋭く命じた時、“リアンダー”の前部甲板にバズーカ弾が一発、二発と直撃し、ブリッジが激しく振動した。
「艦長!!」
オペレーターの差し迫った声が聞こえ、衝撃に耐えていたロングが顔を上げた時、三発目のバズーカの弾体がブリッジの窓を破ってロングの傍を飛び去るとブリッジ後方で炸裂し、全てを吹き飛ばした。

UC0079.10.16 0:54 地球軌道
MS-06Sのコックピットで操縦桿を握るドン・サイゴウ中佐は自らが撃沈し、大きな閃光を広げる敵巡洋艦の傍らを飛びぬけながらなおも大笑いを続けていた。決して敵を威圧するためではない。(下方に今しがた後にしてきた地球がひろがるとはいえ)無限の空間を単騎で思うさま駆け抜けて戦える喜びに笑いが止まらなかったのである。
ハワイ攻撃に失敗し、キャリフォルニアベースに帰投したサイゴウを待っていたのはザップ率いる第100戦隊への合流命令であった。地球攻撃軍北アメリカ方面軍司令のゲオルグ・ヴューラー少将は中央アジア方面軍司令マ・クベ大佐の助言と根回しにより、元々ザップと共に100戦隊パイロットとして宇宙に上がる予定であったサイゴウの異動命令を保留にし、彼にハワイ奪還部隊の指揮を任せたが、律儀なヴューラーは作戦が終了するとすぐに保留されている異動命令を履行できるよう、手続きをとった。ザップに過度な戦力、指揮権が集中するのを嫌うマ・クベはこれに対し、何の動きも見せなかった。何故ならこの日、地球では戦局が劇的に動いており、マ・クベは軍内の抗争にかまけている場合ではなかったのである。ドーバー海峡を渡ったレビル大将率いる地球連邦地上軍は公国軍に有効な反撃を取らせないままヨーロッパを席捲し、そのままオデッサに到達、数日間の激戦の末、これを陥落させた。オデッサの防衛の指揮を取っていたマ・クベは宇宙に脱出するだけで精一杯であった。
結果、サイゴウは一人水陸両用部隊である104戦隊を離れ、同じく機動軍に異動となった将兵と共にHLVによって地球軌道に上昇し、ザップ率いる100戦隊に合流することとなった。ヴューラーの手厚さはサイゴウを単に宇宙に打ち上げるのに留まらず、万が一に備えてMS-06SをHLVに積載させることまでしたのである。
こうして今、サイゴウはMS-06Sの強化されたスラスター性能を存分に引き出し、豪快に笑いながら残り1隻となった敵巡洋艦に向かって突進していく。
「所属不明の06S、敵一番艦を撃沈!そのまま二番艦に接近していきます!」
“テト”のブリッジでは“クラスノヤルスク”のMS隊からの中継により、HLVの付近での戦いの状況が判明しつつあった。
「“サラミス”一隻をあんな短時間で沈めるとは・・・。だが、幸運が続くとは限らない、司令!!“テト”隊の一部を応援に急行させましょう!」
“テト”艦長のヘン・サムリンがHLVから出撃した06Sの動きに舌を巻きながらも手元の戦力から増援を送ることを進言した。戦隊正面から奇襲攻撃を仕掛けてきた敵MS隊はハルゼー中佐を初めとする味方モビルアーマー及びMS隊の活躍により、撃退されつつあったのである。
「いらん!!手の空いたMSは戦隊上空を警戒させろ!!あっちの男には援軍など必要ない!」
ザップは苦虫を噛み潰したような表情でサムリンの進言を却下した。
「サイゴウ中佐が返ってきたのはうれしい事ではないですか?」
戦隊副官のニシムラ大尉がザップの心理を判っていながらからかうかのよううに声をかける。
ニシムラに冷たい一瞥をくれるとザップは腹に力を入れ、“戦隊の必要悪”、ドン・サイゴウを迎え入れる覚悟を固めた。


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